物心がついたころから、私は肉類が一切食べられない。アレルギーとかではなく、体が受け付けないという感じだ。偏食歴はこの頃から始まっている。
口の中の嗅覚で肉汁を感じると、とたんにえずいてしまうのである。それは今も変わらずで、ずいぶん長い間苦労をしてきた。
肉類が食べられないということが、どうしてここまで差別を受けるのか、どうにも理解できないまま今日に至る。誰のせいでもない。もちろん本人の責任でもない。親の責任でもない。ただの遺伝なのだ。体質なのだ。
この件での苦い思い出のスタートは、保育園の担任から始まった。
給食の話は以前の「なめくじ弁当」でも書いているが、白ご飯は家から持参し、おかずは保育園から支給されるシステムになっていた。
当然、おかずに肉類が出ることは珍しくなく、こっそり避けてはご飯の弁当箱に隠し入れていた。
ある日、担任が皆の弁当箱を開けさせ、残していないかをチェックして回った。
順番がきて、当然私が隠し持っているものもさらけ出され、皆の見ている前で、それを食べよと命令された。なんて恐ろしいことだ。他に口に入れるものは残ってなく、肉だけを口に入れさせる。当然わたしは何度も激しくえずく。涙も出る。えずく姿を見て回りが笑う。みじめな姿だ。
そんな、抵抗のできない五歳児への地獄の吊るし上げ劇があったのだ。
好き嫌いなく全部残さず食べることが美学とされる頃の本当にあった残酷な話。
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