食材や日用雑貨を扱う店が町内に1店はあり、そこへ行けば一通りの物は買えるというのが日常生活の姿であった。大人たちは夕方に籠を下げてその日に入荷したおかずの材料を探しに行く。そしてツケ(帳面付け)で物を持ち帰り、月末に支払うというシステムであった。
当時はそのシステムはおろか、お金で商品の売買が成立することすら知らない私は、ある日、店主が見つけてくれたらお菓子をくれるのかと期待し、かなり長時間お店の前をウロウロしてみた。
ケンケンしたり、ぴょんぴょん跳ねたりと、目に留まるように工夫をして見せた。
見かねた店主は、外にいる私に近づき「店の物が欲しいのなら、家の人にお金を貰って来るように」と諫めた。
物乞いめいたことをしている自分の浅はかさがたまらなく恥ずかしく、走ってその場を立ち去ったことを今でも覚えている。
コメント